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畳んでありますので、伸ばしてご覧下さい。
棋院の建物の中は暖房が入っているのに、ひとたび廊下に出るとひんやりとした冷たい空気がアキラの頬をなでる。温かい缶コーヒーを片手に、廊下の奥に設置されている長椅子に腰掛けた。アキラの対局は終了したが、棋士の大半はまだ碁盤の前に座っている。
静かな場所でのんびりとコーヒーを飲んでいるアキラの元へ、ヒカルがやってきた。彼女の終局したようで、その手には缶ジュースが握られている。
「おー、ここにいたのか」
何てことなく、いつもと同じようにアキラに声をかけたヒカルは、彼の隣にちょこんと腰掛ける。しかし、ふたりの間には不自然に人ひとり分の空間が存在していた。
「……進藤、どうして間を空けて座ったんだ?」
「いや、だって何かこう……横に並ぶのって恥ずかしいじゃん」
ヒカルは口を尖らせて答えた。その瞳は泳いでいる。
付き合う前は、アキラにタックルするかのように飛び付いてきたり、ケンカのボルテージが上がり過ぎて胸倉を掴んだり、うっかりアキラの目の前で大泣きしたこともあるヒカルだったのに、いざ付き合い始めたら急にしおらしくなってしまい、アキラと一緒にいるところを他人に見られるだけでも恥ずかしいと言い出したのだ。
単に「恥ずかしい」だけで諸々の接触を拒否される側のアキラは、付き合い始めてまだ一週間だというのに、少なからず凹んでいた。
「……進藤」
「なにー?」
先程までの対局の熱気がまだ残っているのか、ヒカルの頬はほんのりと赤いし、彼女の持っている缶ジュースはよく冷えていた。
「寒くないの?」
アキラは缶コーヒーを床に置き、缶ジュースを持っていない方のヒカルの手を握ると、ほかほかと温かかった。
「うん。オレ、冷え性じゃないし」
彼女ははっきりと否定し、まるでビールでも呷るかのように冷たいジュースをぐいっと飲んだ。
「くーっ、うめぇ!」
「……進藤」
「ってオイ! いつまで手ェ掴んでんだよ! 離せっての!」
ヒカルは照れて恥ずかしがっているだけなのかどうか、アキラには分からないが、好きな人に手を振り払われるのはやっぱり傷つく。
「どうしてダメなんだ? 手を繋ぐくらい良いじゃないか!」
いきなり強い口調で突っかかってきたアキラに、ヒカルは目を丸くして驚き、しかしすぐに立ち上がって負けじと言い返した。
「だからハズいっつってんだろ! 分かれよ!」
「分からないね! そもそもキミとボクは付き合っ……」
先を言わせまいと、ヒカルは慌ててアキラの口を手で塞いだ。
「デカい声で言うんじゃねぇよ!」
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一次も二次も書く人間。
最近は現実も見るようになったけど、やっぱり妄想族。
実は“うつ”わずらい。通院中。体調に超波あり。
ハムスター溺愛中。ジャンガリのノーマルグレーが好き。
こっそり打楽器奏者。ティンパニスト。時々ドラムもたたく。
新年の練習には行けない模様。
ちなみに、ピアノは趣味、打楽器は特技、だと思っている音楽大好き人間。サンホラがお気に入り。