[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
下に畳んでありますので、開いて下さいませ〜
ヒカルはゆっくりと瞼を持ち上げた。最初に認識できたのは見覚えのない天井で、現在自分がいる場所が自身の部屋ではないことは、ぼんやりとした頭でも分かった。
それならば、ここはどこなのだろうか。
顔を静かに右の方へ動かすと、大きな窓が視界に入った。そこから覗く外の風景は明るいので、今は昼間のようだ。
ヒカルは、今度は右手を動かそうと力を入れてみた。しかし右腕は鉛のように重く、ベッドの上に投げ出されたまま、持ち上げることはできない。それでも辛うじて、指先だけで動いたような感覚はあった。
(左手はどうなんだろう……)
反対側の腕に力を込めると、急にビリビリとした大きな痛みがヒカルを襲った。その痛みをやり過ごすために少しだけ身じろぎすると、それまで大人しかったベッドがギシリと音を立てた。
「進藤……?」
ベッドの悲鳴に気付いたのか、男性の声がヒカルを呼んだ。
誰なのだろう。
声の主を確認しようとヒカルが頭を左側に動かすよりも早く、彼女の表情をしっかり見ようと覗き込む顔があった。ヒカルはそれに驚いて、少しだけ目を丸くした。
「進藤、気が付いたか……良かった……」
その男性は今にも泣きそうだったのに、何故かヒカルはその顔を眺めているだけだった。彼は「良かった」と何度も呟いている。ただ見ているだけのヒカルだが、自分が何か大変なことをしたらしいのは、薄くではあるが感じた。そうでなければこの目の前の男性は、泣き笑いのような表情にはならないだろう。
ヒカルは不思議と「声をかけなくては」と思い口を動かしたが、喉が上手く声を作れなくて、空気が通過しただけだった。声を出そうと再度息を吸ったが、それよりも早く彼は動いた。
「ああ、そうだった。キミのお母さまは少し席を外されている。代わりにボクがキミに付き添っていたんだ。今呼んでくるよ。……その前に、先生に知らせた方が良いか……」
ナースコールのボタンを押して「進藤さんが目を覚ましました」と伝える彼を、ヒカルは眺めていた。無表情で見つめてくる視線に気付いた彼は、優しく微笑する。
「待ってて、キミのお母さまを呼んでくるから」
「オマエ……」
ヒカルの喉がやっと仕事を始めた。微かな声だったが、彼の耳にはちゃんと届いたらしい。笑みを深くした彼は右手を伸ばして、ヒカルの頬にかかる髪をそっと退ける。
「何だい、進藤?」
ヒカルは眩しそうに瞬きをした。
「……オマエ、誰?」
彼の笑顔が、その一言で凍った。
08 | 2024/09 | 10 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
29 | 30 |
一次も二次も書く人間。
最近は現実も見るようになったけど、やっぱり妄想族。
実は“うつ”わずらい。通院中。体調に超波あり。
ハムスター溺愛中。ジャンガリのノーマルグレーが好き。
こっそり打楽器奏者。ティンパニスト。時々ドラムもたたく。
新年の練習には行けない模様。
ちなみに、ピアノは趣味、打楽器は特技、だと思っている音楽大好き人間。サンホラがお気に入り。